女性の活用が経済再生のバロメータ

925日、ワシントンで開かれた「アベノミックスからウーマノミックスへ:働く女性と日本の経済再生」というシンポジウムに、厚労省村木次官をはじめとする数人の女性の方々と出席しました。

ブルッキングスは米国民主党に非常に近い、影響力の大きいシンクタンクです。聴衆は140-150人。通常より多めとのことでした。米国で日本への関心が高まっていることを感じさせました。

村木次官の基調講演、専門家のパネル。ここでは日本からは、経済産業省 経済社会政策室長の坂本里和さんがパネリストでした。彼女自身4人の子供を育てながらの働く母親でもあります。

私の出番は、その次のラウンド・テーブル。私のほかに、日本からはバリバリの仕事師がそろいました。IBMの役員を経てベルリッツの社長も務められ、今、企業の女性人材育成を手掛けている内永ゆか子さん、NHK解説委員の道傳愛子さん、笹川平和財団常務理事の茶野順子さんです。皆、ざっくばらんに思いのたけを話しました。セミナーの模様はネットでご覧になれますので、関心のある方には見て頂ければと存じます。
セミナーの模様についてはこちらから(ブルッキングスホームページ・英文)


 ブルッキングスが日本の女性に焦点を絞ってイベントを行うのはおそらく初めてではないかと思います。①少子高齢化が進む中で日本は労働力不足が経済成長(再生)の制約となるのではないか、そうならないように日本は女性の力をもっと活用すべきではないか。②日本は世界の中でも男女間格差が大きい国であり、それはなぜなのか、との点が問題意識だったと思います。

たしかに、①についていえば、クリントン前国務長官の「日本の女性労働力化率が男性並みに上昇すれば、GDPは16%上昇」というスピーチやIMFラガルド専務理事の「日本の女性労働力化率が他のG7(伊を除く)並みになれば、一人当たりのGDP4%上昇。北欧並みになれば8%上昇。」との意見もあり、真剣に受け止める必要があると思います。

また、②については、日本の管理職の女性比率は先進国の中で最低水準であるばかりか(韓国と並び、かつアラブ諸国と同水準)、各国が真剣に取り組む中で、格差はむしろ広がっています。欧州では、仏、ノルウェー、オランダ、アイスランド、スペインなどで、上場企業の取締役会のクォータ制(女性比率3040%)という取り組みもなされているし、アフリカには、国会議員に女性枠を作っている国もあると聞きました。

 平安の昔、文学者は女性でした。こんな国は他にはないでしょう。昔から、男女の性別役割分担があったわけではありません。

 幸い、安倍政権は成長戦略の中に女性を「最も活かしきれていない人材」として位置付けています。子供を預けるところがなくて社会復帰ができない女性を私は何人も知っています。経済界も「役員に一人は女性」ということに積極的だそうです。結構なことですが、一人は最初の一歩。「一人登用すればいいんでしょ。」などと言わず、大勢登用してほしいと思います。

 女性の活用がどこまで進むかは、「従来の枠にとらわれず、枠の外の出て発想し、行動する」ことができるかどうかのバロメータです。女性の労働力そのものが経済成長にプラスするとの点だけでなく、ここに経済再生のカギがあると私は思っています。

漢方と成長戦略

 

高齢化が進み、社会保険制度の存続が危殆に瀕しているわが国で、漢方に対する期待が大きくなってきている。漢方は、一人の人間をシステムとしてとらえて総合的に治療するという点で、特に高齢者に対して効率的に治療ができるほか、2009年のH1N1インフルエンザのような感染症に対しても、麻黄湯がタミフル同等かそれ以上の効果をあげたそうである。

生体防御反応を高めるので、インフルエンザの型によらず対応できる、耐性ウイルスを作らない、初期対応が可能であり、インフルエンザを疑った時点で服用することで医療施設を訪れる患者数を減らせる、医療経済的に安価などの利点があると聞いた。現在、漢方は医学部の教育にも取り入れられ、約84%の医師が、漢方を処方している。

 

このように重要な漢方だが、一つの産業として考えた場合、その基盤は大変に脆弱だと言わざるを得ない。

 

第一に、供給サイドでは、原料の海外依存度が大きいという問題がある。約8割が中国からの輸入であり、以前の日中関係緊張時には、レアメタルのみではなく、漢方の輸入もかなり滞ったと聞いた。日本の食料自給率は約7割(生産額ベース)あるが、安定的供給確保の観点からは多角化や国内生産への切り替えが必要だと考える。また、中国の所得の向上に伴って需要が増加し、価格上昇が問題になっている。

 

現在農業政策の中で、減反が行われ貴重な農地が転用されたりしている。こうした農地を漢方の生薬生産に使えないものだろうかと考える。一定の補助金は必要であるが農業においては補助金は新しい話ではない。農業経営の多角化にも資すると思う。

 

第二に、需要サイドについては、医療保険の枠組みの中での扱いが適切であるか否かについて検討が必要である。今から3年ほど前、民主党の政権下で事業仕分けが華やかだった頃、漢方薬を健康保険の対象外にするという結論が出たことがあった。「湿布薬、うがい薬、漢方薬などは薬局で市販されており、医師が処方をする必要性に乏しい。」という理由だった。この時、反対する署名運動がおこり、合計92万を超える署名が3週間で集まったとのことである。

 

現在、漢方は引き続き保険の対象に残っているが、薬価を超える価格で納入されている生薬の品目は約65%で、シェア率上位二社のうち、一社がすでに薬価販売を中止し、もう一社も今秋に中止を予定しているとのことである。これでは、漢方の将来は心もとない。

 

第三に、漢方について知財面からの保護が十分かどうかという点である。

漢方は、中国に起源を持つが日本独自に発展した医療であり、文化である。近隣の中国や韓国において、伝統医療は西洋医学とは全く別の体系に位置付けられているのに対し、日本では、医師免許は一本化されており、従って、西洋医学と統合的に発展する可能性を持っている。

 

それなのに、日本は、この可能性の意味を認識せず、知財戦略で中韓に大きく遅れてしまった。韓国は、朝鮮時代の医学書「東医宝鑑」を世界記録遺産に登録し、中国は鍼灸を世界遺産に登録した。それだけではない。現在行われている、伝統医学の植物のコードづくりの作業の中で、中国の国内基準が国際標準にされようとしている。同じ名前の植物であっても、中国と日本の漢方では意味するものが必ずしも同じではない。そうなってしまうと、日本の薬局方による漢方が、国際標準から外れることになりかねない。国際標準を制するものは国際市場を制するのである。

 

日本の漢方は品質の良さからも、高齢化が進むアジア諸国に対して輸出産業となる可能性を秘めている。また、国際競争力があることが成長産業であることの一つの条件である。二番目では駄目なのである。一番目を狙ってこそ強くなれる。世界市場を狙ってこそ、国内市場が守れるのである。日本の市場だけでやっていけると思うと、パソコン98シリーズのようになる。

 

アベノミックス第三の矢、成長戦略の中で、総合的、統合的な漢方戦略が必要だ。

 

 

 

政治家の慰安婦発言について


政治家の慰安婦についての発言に批判が集まっている。戦場には性がつきものだ、日本だけではないではないか、との趣旨だとの説明もあった。しかし、国内外で波紋が広がり続けている。とにかく残念、そして悲しい発言である。




日本での慰安婦の論議は、権力による強制連行があったかどうかという点に焦点が絞られてきた。河野談話の見直しの議論も、そこに端を発している。しかし、私は問題の本質は、河野談話にあるように、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」との点にあると思う。権力による直接的な強制連行があったかどうかは問題の一部である。仮に、権力による強制連行がなかったとしても、女性達は自らの意志でそこを離れることができたのだろうか。その監視に権力が全く関与していなかったと言いきれるのだろうか。だからこの問題に対しては、「政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」(河野談話)ことが必要だと私は考えている。



慰安婦問題を人権という視点から考えることは、国際社会の潮流になっていると私は思う。戦場には性がつきものだとの考え方は、女性を「モノ視」した発想である。慰安婦について国際社会が問題にしていることから大きくずれている。これは女性の人権が尊ばれているか否かの問題である。



そして、極めて残念なことに、日本が内向きの議論に時間を費やしている間に、この国際社会の常識が、一部の人たちに「利用」されているようにも見える。



日本はどうすべきなのだろうか。河野談話は、女性の人権についての立場も踏まえていると私は思う。だからこれを変えることは、人権の視点を否定したと捉えられかねず、望ましくないと私は思う。この談話および、アジア女性基金を設けた経緯とそれによって成し遂げたことを、丁寧に世界中に対して説明し続けるべきだ。これらは、私たちが考えるほどには、近隣諸国の国民にすらあまり知られていない。どうすればよく知ってもらえるかも、答えは簡単でない。



先日あるヨーロッパ出身の人が私に「日本人はなぜいつまでも、戦争のことや歴史問題にこだわっているのか」と聞いた。EUの進展から見れば、半世紀以上前のことがなぜ今これだけ大きな問題になるのか、不思議に思ったのだろう。私は彼に、1998年に小渕総理と金大中大統領との間で作られた新しいパートナーシップについての「日韓共同宣言」や、安倍総理と胡錦濤主席の間で合意された戦略的互恵関係の話をした。「日本は、新しい関係をこれらの国々と築きたいのです。にもかかわらず、日本は、過去にひき戻されてしまうのです」とも。



他によって引き戻されることは確かにあるのだが、少なくとも日本から過去に戻すべきではない。今情報は一瞬のうちに国境を越える。政治家には、国内向け発言と国際社会向けの発言を分ける贅沢は許されない。ガラパゴスすらないのである。



日本の政治家の発信力ないし国際競争力は、我が国の国益を、国際社会で共有されやすい大義や常識にのせて伝えることができるかどうかである。

若手が台頭する沖縄

   
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21日と22日の2日にわたり、自民党・沖縄振興調査会長として沖縄各地を視察してきました。 
  



私のほかに、額賀福志郎・調査会顧問、宮腰光寛・美ら島(ちゅらしま)議員連盟幹事長が東京から行き、島尻安伊子内閣府大臣政務官はじめ四名の沖縄県選出の衆議院議員が現地参加する、大変濃密で刺激的な視察になりました。 



視察の目的は、昨年三月に私が尽力してまとめ上げた沖縄振興に関する特別措置法で実現した、一括交付金制度の使い勝手について、実情を把握することです。

同時に、昨秋開学した沖縄科学技術大学院大学や沖縄経済の将来の成長がかかる、那覇空港第二滑走路建設予定地を見学することも、もう一つの目的です。



北部十二市町村や離島の首長、名護市議団、県議団、仲井眞弘多知事、そして若手経営者等と懇談しましたが、現場に出て、私は次のような感想を持ちました。 



第一に、30歳代や40歳代の若手が目立ちました。企業経営者ばかりでなく、自治体の首長や議員にも確実に若手が進出しています。 

沖縄返還の年(1927年)に生まれた人が今年41歳になります。若い世代は、沖縄経済の将来像や政府と沖縄との関係、あるいは米軍基地のあり方について、上の世代とは異なる考えを持っているようです。 



沖縄のことを東京との関係だけでみるのでなく、成長するアジアあるいはグローバル経済のなかで、客観的に理解しようとする姿勢がうかがえます。 これから五年も経つと、沖縄の意識や考え方もガラっと様変わりするような予感がしました。 



第二に、空港施設の重要性を再認識したことです。空港に隣接する豊見城(とみぐすく)市は人口六万人弱ですが、週刊東洋経済の「日本の成長力ランキング」で2010年と12年に一位になりました。 



那覇空港が日本でアジアに一番近い空港であり、空港の24時間化や貨物便の離発着料等の引き下げで、アジアの発展を最も取り込める場所であることが評価されたのでしょう。 私は第二滑走路建設の工期を当初の七年から5年半余りに短縮させましたが、これからも建設が円滑に進むよう、沖縄振興調査会長として活動してまいります。


 

21世紀の貿易・投資ルールづくり



 安倍総理大臣は315日、記者会見を開き、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に向けた交渉に参加する決断をしたことを発表しました。 


私は総理の決断を全面的に支持するとともに、今後は交渉の経過や内容が節目節目で、わかりやすく国民に伝わるように、政府交渉チームの活動を見守り、政府を支えていきたいと思います。 


私は3年前から、中村博彦参議院議員とともに、「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」(後日、環太平洋経済連携に関する研究会と改名)を主宰し、延べ20回、我が国がTPP交渉でなにを獲得すべきか、に焦点を当てて勉強してきました。 


こうした政策勉強の積み重ねからみると、1月以降に突然、党内を二分させるほどに盛り上がったTPP反対論議は、具体的な政策論に深まらず、残念でした。「池のなかでクジラが暴れている」ようなもので、大海でなにが起こっているか、まったく無関心にみえます。 


TPP交渉について語るとき、忘れてはならないことが3つあります。 


第一は、TPPは日本経済再生を実現するための手段であるということです。安倍総理は129日の所信表明演説で、「強い経済」を取り戻すことを訴え、日本経済再生本部を設置しました。 


ところが、我が国EPA(経済連携協定)の品目ベースでみる自由化率は85%前後にとどまり、米国、EU、韓国、中国等の97%以上とかなりの隔たりがあります。それだけ日本経済は「弱み」を抱えているのであり、これの解消・強化なくして「強い経済」を取り戻すことはできません。TPP交渉参加は、経済再生のための手段なのです。 


第二は、TPPは到達点ではなく、通過点であるということです。2010APEC(アジア太平洋経済協力会議)横浜宣言において、TPPRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、ASEAN+3(東アジア自由貿易圏構想)といった地域的な取組をさらに発展させて、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏構想)を目指すことが明確な目標になったのです。大事なのは通過点の適否ではなく、実現する中身のはずです。 


第三は、日本が主役になれることです。APECが目指しているものは、単にモノや資本の自由な移動を越えて、できるだけ国境の中の諸制度を共通化し、さらなる経済発展の基盤を強化することです。これは、10年以上停滞しているWTO(世界貿易機関)に代わって貿易・投資の自由化ダイナミズムを再活性化することにつながり、「貿易立国」日本にとって、死活的に重要なことです。そもそも、環太平洋経済連携構想を創出したのは大平政権であり、米国をアジア太平洋の経済圏へ引き込んだのも我が国であることも思い出すべきでしょう。 


記者会見の結びで安倍総理は「本当に恐れるべきは、過度の恐れをもって何もしないこと」と説き、前進するよう訴えました。私は総理の決断を全力で支えて参ります。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本・インド・ドイツ 三極シンポジウム



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26日、私は世界平和研究所からの依頼で「日本・インド・ドイツ」シンポジウムで講演を行いました。 


このシンポジウムは、世界平和研究所、ベルリン日独センター、コンラート・アデナウアー財団が共催するもので、アデナウアー財団が昨年日本事務所を新設したのを機に開かれました。 


日独の関係は明治時代以来、長く深く続いており、最近は、両国とも貧困撲滅、テロ対策など、地球規模の課題に積極的に取り組んでいます。そこに新興経済国のインドが加わることで、3国が、どのように世界の平和と繁栄に貢献できるか、を議論したのです。野心的な試みです。 


インドは、世界最大の民主主義国であり、戦後日本が国際社会に復帰するに際し、非常に尽力してくれた国です。若年人口が多く、情報産業を中心に高い経済成長を遂げていますが、貧困や地域格差の問題などを国内に抱え、なかなか国際社会でリーダーシップを発揮できません。私は、G20でインドにもっと国際的な責務を果たしてほしいと願っています。 


シンポジウムでは、ドイツ側からなぜ今欧州がアジアに戻ってきたかについて、グローバル化の進展および、中国の存在感の高まりが指摘され、アジアの地域的な問題も、欧州に多大な影響を与えるようになっていることが明らかになりました。 


またインド側からは、新興経済国の台頭や分野横断的な問題の増加から、国際的なガバナンスはG20へ移行した、との発言がありました。同時に、海洋における安全保障に関する新しい仕組みづくりの必要性が言及され、その枠組みに中国を引き込むことの重要性が強調された点が注目されました。 


日独印3国の役割を議論する場においても、中国が影の主役だったわけですが、台頭する中国にいかに向き合うかという課題が、世界各国が共通に抱える難題であるとわかった点は、私にとって大収穫でした。 


これからも様々な機会を通じて、国際社会に貢献する日本の考え方を発信して参ります。

 

 

 

 

 

 

 

政策実現力で信任を引き戻す





昨年1216日の衆議院総選挙は、自由民主党の地滑り勝利でした。3年3ヶ月ぶりに政権奪還できたことは、非常に喜ばしいことです。誇りある日本を取り戻すために、日本経済を再生させるために、全身全霊を捧げて取り組んでまいります。



 しかし今回の勝利は、我が党が国民からの信任を完全に取り戻したから得たものではありません。有権者の「民主党にはとても任せられない」という失望感が、小選挙区制という振れ幅の大きい結果を生みやすい制度と相まって、このような結果になっただけです。



今回の衆院選の結果を俯瞰すると、我が党が早急に対処すべき「不都合な真実」が明らかになります。



 第一は、投票率が59%余と戦後最低だったことです。前回と比べると10%も低下しました。前回、政治に関心を寄せてきた無党派層を、自民党はつなぎ止めることができず、政治無関心層を増やす結果となったのです。



 第二は、比例得票数の減少です。自民党が大敗した前回の1,881万票に対し、今回は1,662万票、200万余票の減少です。民主党は2,000万余票減らしたのに、我が党はその分を取り込めていないのです。一方、日本維新の会は1,226万票を獲得し、比例では自民党に次ぐ第二党の地位を占めています。前回と今回では投票率が大きく異なるため、単純な比較は厳密さに欠けますが、少なくとも、我が党は支持者のすそ野を広げることはできなかった、と言えそうです。



 要するに、自民人気は消去法の産物に過ぎず、「何かが変わった」と有権者が自民党を認めたわけではないのです。



 我が党が国民からの信任を真に取り戻すには、選挙公約で約束した政策をいち早く実行し、結果を示さなければなりません。最近の株式市場の続伸や円安の進行に浮かれて、「参議院選挙までは安全運転」と中長期的な懸案を先送りしようものなら、ただちに有権者から見放されるでしょう。



 幸い、安倍政権は十兆円超の補正予算作成に着手し、補正と25年度当初予算を切れ目なく執行する「15ヶ月予算」を推進しようとしています。



すでに足下の景気対策に手を打ったのですから、次は中長期的な経済再生策に取りかかる番でしょう。円高による空洞化を抑えつつ、日本経済の供給能力と産業競争力の強化を図らねばなりません。



具体的には、技術革新力強化のための研究開発減税、医療・介護、創薬、農業など、成長分野での規制改革の加速化、TPP(環太平洋経済連携協定)への早期参加表明が重要です。



こうした政策は一部の既得権者に痛みを及ぼしかねませんが、先延ばしすればするほど、グローバルな競争力を失い、衰退に追い込まれることも忘れてはなりません。既得権益団体も、意識と行動の「脱皮」を求められます。



私は、日本の産業競争力強化を着実に実現するよう努力してまいります。


 

カザフスタンとの大切な関係  



中央アジアにカザフスタン共和国という旧ソ連邦から独立した国があります。私は12月17日、同国の独立記念日レセプションに招かれ、祝意を述べる機会がありました。カザフスタンは日本の7倍の面積ですが、人口は1,600万余人しかなく、宗教はイスラム教が7割、ロシア正教が3割の国です。一見すると日本と共通点がないようですが、実は、大きな志を共有する、大切な国なのです。

私が初めてカザフスタンを訪問したのは、2004年8月のこと。外務大臣であった私の訪問目的は、中央アジア5カ国と日本の二国間および多国間協力を強化するための対話、この第一回会合を開催することでした。以後、「中央アジア+日本」対話は、定期的に開催され、12月10日に東京で第四回会合が開かれたばかりです。

カザフスタンにはセミパラチンスク核実験場と呼ばれる、旧ソ連邦時代の核実験場があります。四国の面積にほぼ等しい、草原地帯の実験場は、1949年から1989年の40年間に合計456回の核実験に使用されました。残念なことに、この間、人々の被曝による影響はソ連政府によって明らかにされることはありませんでした。

1991年8月、施設は正式に閉鎖され、ナザルバエフ大統領は、北朝鮮やイランと異なる方針で国づくりを始めます。つまり、核兵器開発を放棄し、エネルギー資源の平和利用よる国家建設です。このように、我が国とカザフスタンは、核兵器による被曝国であり、「核兵器のない世界」の実現という目的を共有する同志なのです。

一昨年の10月、私は再び同国を訪問し、核実験場跡地を視察しました。現場に立つと、核兵器が生み出す想像を絶する悲惨さをあらためて痛感します。同時に、政府関係者から、核放棄の決断以降、欧米先進国からの直接投資が拡大しているとの喜ばしい話も聞くことができました。

我が国とカザフスタンが協力関係を深めていく分野は、核軍縮以外にも沢山あります。安倍政権になってからも、我が国と同国との協力関係が一層強まるよう、引き続き全力投球して参ります。


 

川口順子プロフィール

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